(公財)日本ソフトテニス連盟 会長 安道光二
当連盟は、令和元年6月30日、千葉県白子町において開催された東日本学生ソフトテニス連盟(以下「東日本学連」と表示)主催、日本学生ソフトテニス連盟共催の、第62回東日本学生ソフトテニスシングルス選手権大会において、当連盟の定めたソフトテニス・ルールに違反した試合が多発した問題並びにこれに関して同学連及び日本学生ソフトテニス連盟(以下「日本学連」と表示)が行った処分等の活動に関して、現在まで取り組んできた経過を下記のとおり報告します。
第1 当連盟に於ける本件調査の端緒
- 1 当連盟には、令和元年7月12日、当連盟の強化委員長より2019年ソフトテニス世界選手権の日本代表予定選手の中に、上記不正試合関与者がある、との情報がもたらされた。
当連盟は、同月17日、競技者資格委員会を開催し、上記大会において不正試合に関与した選手を世界選手権の日本代表から除外する方針及びその他の上記不正試合問題については日本学連・東日本学連の報告を待って検討することとして、この委員会の決定を当連盟の理事会に提案して審議を受けることとした。
当連盟は、7月18日、東日本学連会長から「令和元年度東日本学生ソフトテニス大会シングルス選手権大会における選手のルール違反に対しての処分について」と題する文書を受領した。
その内容は、不正試合参加選手に対して「不正試合参加選手は同選手権大会の出場者として失格、厳重注意、反省文の提出を命じた」との趣旨であり、不正試合参加選手及びその不正の手法については、「3回戦でシングルス対戦する選手が、シングルス試合を行わず、他の選手を交えてダブルス試合を行い勝敗を決した。」というものであった。
当連盟は、7月19日、不正試合に関与したとの情報のある選手2名の所属大学の監督から、その2名はそれぞれ「世界選手権大会の日本代表として出場することを辞退する」旨の申し入れを受け、翌20日、上記2選手の所属大学のソフトテニス部長から同趣旨の電話による連絡とともに文書でこの旨を提出すると告げられた。
当連盟の強化委員会は、上記の連絡を受けたことにより辞退した2名に代わり世界選手権大会に推薦する日本代表選手2名の選考に入り、代替選手2名を選考し、7月22日、専務理事に報告し、理事会の承認を求めるために専務理事より各理事に対して書面で上記の経過を報告し、日本代表選手のうち2名の辞退と交代する2選手について各理事・監事に意見を求める文書を発送した。(7月31日全理事承認)。 - 2 当連盟は、7月26日、日本学連に対して、「令和元年度東日本学生ソフトテニス大会シン
グルス選手権大会における不正試合の実態」について質問する文書を交付し、その回答を求めた。
当連盟は、7月30日、日本学連から「令和元年度東日本学生ソフトテニス選手権大会シングルスにおける不正マッチについて」と題する報告を受けた。
同報告は、不正試合関与選手名、不正方法、不正試合関与選手に対して同学連が暫定処分として2019年度全日本学生ソフトテニス大会出場禁止処分にしたこと、今後も全貌を明らかにする調査を行い、調査完了後に最終処分と再発防止策を決定する旨の記載があった。 - 3 当連盟は、8月19日開催の競技者資格委員会で上記日本学連の報告を審議し、不正関与選手数、暫定処分の根拠、処分の均一性、当連盟で判明していたドロー作成時に既に意図的に高校数校については同一高校卒業者を同一ゾーンに集中した構成で作られていた事実について何等の記載がされていないことなど、数点に疑義があり、しかも同様の不正が東日本学連傘下において数年に渉って頻発していたとの事実に言及していないこと、不正試合多発の真因は日本学連及び東日本学連等の組織活動にある可能性が強い等、日本学連の報告の不備が指摘され、問題がさらに混乱し、拡大することが推測されたので、本件は競技者資格委員会の問題に限らず、当連盟が独自に調査して当連盟としての処置を判断する必要があると決定した。
当連盟は、8月20日、東日本学生ソフトテニスシングルス選手権大会参加選手の所属大学(29大学)に宛て、不正試合に参加した選手に関する調査報告を求める文書を送付した。
これに対して28大学から回答があり、計36名の選手が不正試合に関与していた事実が報告された。この事実を受けて当連盟は9月7日開催の理事会において、これらの選手に対して直接事情聴取を行い調査することにした。
第2 当連盟の調査とこれにより浮上した問題点
- 1 当連盟は、令和元年10月5日、同6日、11月17日にかけて、当連盟の照会に回答した14大学所属36名の不正試合に関与したとされた選手に対して当連盟会議室において事情聴取による調査を行った。
当連盟が独自に行った選手等に対する事情聴取とそれまでに入手した日本学連・東日本学連の文書、その他の情報によると、下記の2点において日本学連及びその傘下の学連の運営、活動に関して重大な疑義があることを認定した。
- 第1点 「アスリートの尊厳に対する侵害」の疑義
日本学連に所属する本件不正試合の関与を理由として暫定処置・暫定処分を受けた選手は、その処分の決定、処分内容、処分の根拠、処分の通達、の各点において、後述して指摘する事実においてアスリートとして個人の尊厳を侵害されている恐れがあると推定された - 第2点 「日本学連及びその傘下の学連において、その運営、活動が民主的に公正に運営されていない」疑いがある。
当連盟が本件不正試合多発事件につき、調査したところ及び日本学連及びその傘下の東日本学連の文書その他情報によると、東日本学連及び日本学連が本件不正試合関与者として認定した選手を暫定処置乃至暫定処分に付すにあたって、これを決定した機関、処分権限の根拠、処分決定機関およびその担当者の選出根拠が明らかでなく、従って処分者の処分権限も明らかにされていない。
また、本件不正事件発覚後の処分理由となる事実調査においても、両学連の如何なる機関の決定により如何なる担当者が如何なる権限をもって調査したか明らかにされておらず、公平性を保った調査及び処分である証明は全く存在しない。
当連盟は、重点を上記の2点に置いて調査を進行したところ、現在に於いて判明した事実は以下のとおりである。
- 第1点 「アスリートの尊厳に対する侵害」の疑義
- 2 【当連盟の調査】
当連盟は、日本学連の調査報告が遅延し、且つ真相が不詳であり、疑問点が多いので、上記14大学の回答を基に不正試合に関して独自の調査を行うことを審議し、同年9月7日開催の理事会に於いて当連盟が独自に調査を開始すること及び前記14大学からの回答に指名された選手36名から事情を聴取することとした。
当連盟は、上記決定に基づき同年10月5日、同6日に32名、11月17日に4名の選手から事情を聴取したところ、下記の事実が判明した。
- 日本学連は、前記不正試合関与を認定した選手に対する「暫定処分」を選手個人に直接通知せず、選手等は何れもその所属する大学の監督又は大学から口頭で通知されたに過ぎない。
また、日本学連は、上記の処分をするにあたり、7月28日、処分を受ける各選手に対して事実を確認する尋問を行ったが、その尋問は日本学連関係者と思われる者10名前後の面前に選手が一人ずつ着席して違反事実の有無のみを確認され、事情については一切質問されず、また陳述する機会が無かった。この尋問は選手に対して高圧的であり、このためこの尋問をもって「パワー・ハラスメントを受けた」と訴える選手もあった。 - 東日本学連及び日本学連から上記の暫定処置・暫定処分を受けた各選手は、それぞれ個人として、処分者・処分の権限の根拠となる規約・規程等規約的根拠、処分理由となる行為事実、不服申立方法等を直接告げられることは無く、従ってこれらを明記した書面を交付されることも無かった。
- 本件大会におけるルール違反の不正試合の方法・手段は前記のとおりであるが、かかる手段による不正試合は東日本学連主催の大会及び同学連傘下の関東学生ソフトテニス連盟(以下「関東学連」と表示)主催の大会においては数年以前(少なくとも4年生が入学した当時)から頻繁に行われており、令和元年の関東学連の春季選手権大会においても行われていたが、本件以前には処分を受けた選手はいなかった。このため本件で上記処分を受けた選手等は、不公平感を強くしていた。
- 日本学連は、同年9月19日、本件不正試合に関与したとして処分を受けた選手等に対して「聴聞会」と称して聴取を行ったうえ、「誓約書」と題する印刷した文書を配布され、爾後ルールに違反しない旨を誓約した文書を印刷した書面の末尾に署名捺印して提出し、その後日本学連の処分を解除する旨を通知された(2019年度日本学生ソフトテニス選手権大会は、これら選手は出場を禁止されて既に開催済み)。
- 日本学連は、前記不正試合関与を認定した選手に対する「暫定処分」を選手個人に直接通知せず、選手等は何れもその所属する大学の監督又は大学から口頭で通知されたに過ぎない。
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