■ 前回アジア大会後の重点強化策
前回大会と同様に今大会もハードコートで行われる事は決定してはいたが、国内では、普段の練習、大会はほとんどオムニコートで行われており、ハードコートでの練習が出来ていないのが現状である。
合宿では特にソフトテニス特有のカットサービスの確率と切れ、そしてレシーブ対応に重点を置き強化を行った。またスマッシュの強化、ショートボールへの対応、ダブルフォワードへの対応等あらゆるフォーメーションに対応できるよう取り組みを行ってきた。
また、ハードコートでの試合は他のコートで行うよりも、体力面にもかなりの負担がかかるため、合宿時においてはトレーナー指導の下、体幹トレーニング等、特に下半身に重点を置き、強化を行ってきた。
■ 選手選考の経過と本大会への強化策
当年度の4月にアジア大会(第18回アジア競技大会2018/ジャカルタ・パレンバン)の代表選考会(シングルス)を行い1名が決定した。その他4名の選出については、2018年度ナショナルチームの中から2月、3月、4月の合宿においての各選手のハードコートでの戦術、戦略等の対応力、またフィジカル面を考慮し選考した。
本大会での強化策としては、シングルスについてはバックハンドストロークの強化と相手を前後へ揺さぶるショートボールの使い分け、ダブルスについては前記したように、カットサービス、レシーブ、ダブルフォワードの対応等に重点を置いて取り組んできた。
■ 現地でのコンディショニング
事前合宿での経験から飲食関係、気候、時差・フライト(移動)時間、熱中症を考慮したコンディショニングを行った。
到着時、長時間のフライトやバス移動での身体(特に下肢)のだるさ・むくみを解消するために全身発汗させうる程度の運動を1時間程度実施。体操・ストレッチ、ランニング(20分間)、動的ストレッチ、軽度の無酸素運動、クールダウン(軽運動)。飲食に関して水質の不安から生野菜・生ものは除き、水分補給はミネラルウォーター(粉末アミノバリュー)やオレンジジュース、食事時のスープで摂取するようにした。選手村での食事は味や衛生面で安心できる料理が多く用意されていたこともあり、困ることはなかった。男子選手の体調不良(腹痛)の訴えはなかった。
熱中症対策としては、体重管理を細かく行い、水分補給指導を行った。各選手、指導後は体重減少率を管理しながらプレーすることができていた。
現地練習に関しては、試合時に行う30分程度のアップを毎練習で実施。練習量、負荷、時間は試合当日にピークを合わせるため選手別にコントロールして行った。
■ 各種目の試合経過と戦評
〈シングルス〉
大会初日、幕開けはシングルスからであった。日本からは、船水颯人選手、長江光一選手の2名が出場した。2名は2年連続全日本シングルス選手権のファイナリストでありメダルの期待もあった。
船水選手は予選リーグで韓国のシングルスエース選手と対戦する厳しい組み合わせ。対戦相手は2015年世界選手権のシングルス優勝選手である。その後に行われる国別対抗戦でも対戦する可能性が高く、国別対抗戦を占う非常に大事は対戦となった。
試合は序盤から船水選手が攻撃するも韓国選手の徹底したカットストローク、コートカバー力に船水選手の強打が完全に封じ込められG0-3とリードを許す展開。ここで雨のため約1時間の中断となるが、ゲーム再開後も流れを変えることができずまさかのストレート負けとなった。
長江選手は予選リーグで中華台北の若手選手と対戦。G3-0とリードするも、相手が開き直りファイナルまでもつれる展開に。ここで長江選手は気持ちを入れ直し、相手を振り切り予選突破を決めた。
雨のため翌日に延期となった準々決勝で、こちらも韓国選手と対戦。前半から相手の強打に押され、長江選手の本来の力を発揮できずに敗退。長江選手は日本出発直前に臀部の筋肉を傷めており、現地入りしてからも殆ど練習できておらず国別対抗戦に向けても大きな不安材料となった。
〈ミックスダブルス〉
日本からは、上松俊貴・林田リコペア、増田健人・黑木瑠璃華ペアが出場。2ペアともに出場選手が決定した後でのペアリングとなったためペアワークの出来が鍵となる。
ミックスダブルス初日。2ペア共に予選リーグを突破したが、増田・黑木ペアは緊張のためか若干動きが固く感じられた。翌日の準々決勝で増田・黑木ペアは中華台北ペアと対戦。ゲームの入りは良く1ゲーム目を先取したが、前日同様動きが固く、要所でミスが続きG2-5で敗退。
上松・林田ペアは準々決勝を快勝し、準決勝で韓国ペアと対戦したが、常にゲームをリードされる展開になり結局G3-5で敗れ、銅メダルの獲得となった。
〈国別対抗戦〉
今大会の最終種別となった国別対抗戦では個人戦での気持ちを切り替え、挑戦者として新たな気持ちで臨むようミーティングで指示を送った。国別対抗戦のみのエントリーとなった丸中大明選手も出場する。
予選リーグの初戦は地元のインドネシア戦であった。近年最も力を付けてきた国であり日本にとっては侮れない対戦となった。結果的には3-0で勝利を収め、続く2対戦も勝利し、1位で予選リーグを突破する事ができた。
準決勝は中華台北戦となった。1対戦目のダブルス、中華台北の若手ペアに対し、日本は予選リーグからオーダーを変更し増田・上松ペアで対戦。ゲームの序盤から、増田・上松ペアの集中力が研ぎ澄まされG5-0で圧勝。続く2対戦目のシングルスも船水選手がファイナルで勝利、し勢いを付けて決勝戦へと駒を進めた。
決勝戦は前回大会で敗れた韓国との対戦となった。1対戦目のダブルスで準決勝とオーダーを替え、丸中・長江のエースペアを投入。韓国もキム・ドンフンペアとのエース対決となった。ゲームはG1-1、G2-2と大接戦となるが、5ゲーム目のデュ-スゲームを落とすと流れは韓国へ。6ゲーム目、7ゲーム目もデュ-スゲームとなったが、ゲームを奪うことが出来ずG2-5で敗戦。
続く2対戦目のシングルスは船水選手の登場。個人戦で敗れ、今大会の優勝者である選手との再戦である。しかし、韓国選手も個人戦で決勝まで戦っており疲労が蓄積されている。個人戦とは戦術を変更し、徹底的に粘る、相手と付き合うよう指示を行った。この作戦が功を奏したのかゲーム序盤で韓国選手が疲労のためタイムを要求。ゲーム再開後、リードはされているものの、船水選手が徐々に追い上げる。G2-3の3-1で船水選手がゲームポイントを奪い、ファイナルへ突入するかと思われたが、ここで船水選手も両足に痙攣が起こりタイムを要求する。2ポイントを奪われたところで再びタイムを要求。再開後もゲームポイントを握りながらも苦杯を喫した。ゲーム終了後、韓国選手も歩くことができない程の死闘であった。
■ 競技の総評と反省
4年前のリベンジとはならず、非常に悔しい結果となったが、選手は日の丸を背負い全力でプレーしてくれたことに感謝を伝え大会を締めくくった。
しかし、結果はしっかりと受け止めなければならない。「重要な場面の1ポイント」を取れるかどうかが表れた結果となり、4年後、8年後に向けて更なる技術力、体力、メンタルの強化が必要だと感じた。
また、選手のコンディションの調整を行って頂いたトレーナー、コーチ、日本代表を支えて頂いた方々全ての方にお礼を申しあげたい。
本当にありがとうございました。
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