2月上旬に兵庫県三木市で、全日本アンダー17女子と全日本アンダー14女子の合同強化合宿が行われました。 各カテゴリーから報告が届いたので、分けて紹介します。最初は全日本アンダー17女子チームです。
全日本アンダー17女子チーム編
■全日本アンダー17女子チーム
期間/2018年2月3日~8日場所/兵庫県・三木市 ネスタリゾート神戸、ブルボンビーンズドーム
監督/髙井 志保
コーチ/篠原 和隆
トレーナー/小亀 裕美
選手/20名
「今の自分のままいけば将来はどうなると思うか?」「今のままで「なりたい自分」にたどり着くのか?」 そのことを想像して、本当にやらなくてはいけないことを見つける。このテーマを大きいテーマとして掲げ、今回の合宿を行った。
2月3日(土)
【午後】
・トレーナーによるU-14とU-17の合同ウォ―ミングアップ
・ロビングラリー→ショートラリー
(オープンスタンス気味に打点を近く→セミオープンで打点を前へ。プレーポジションはやや下がり気味でボールのスピードは速く)
・ベースラインシュートラリー→ボレーボレー
どれだけウォ―ミングアップをして入っても、ロビング、ショートラリーのスタート5分くらいは様子見でウォ―ミングアップの延長のような時間を過ごしてしまう。
同世代の選手達で共に試合で対戦などをしていて、勝敗は勝ったり負けたりしている。
それぞれ特徴はさまざまなはずなのに「自分は試合の入り、中盤、後半どこが一番得意か」と質問すると、「入りが一番得意です」と答える選手はほぼいない。私はこれをソフトテニス界でのことではなく、日本人の気質のようなもの(まず空気を読もうとする)ではないかと思っていて、国際大会においても大きな課題ではないかと考えている。そのような課題を選手達が自覚しているにも関わらず、練習の入りで相手の出方を伺うように合わせながらプレーしているのを見て、合宿での取り組みのテーマとして、『入りを意識した上で、頑張って頑張って絞り出すパワーではなく、出したい時に出せるパワーを』をあげた。
・トレーナーによるクールダウン
・ミーティング
食事の後のミーティングでU-17としての全体のテーマの確認と『自分を変える』ということについて話をした。
今の自分の思考や行動は極端にいえば「癖」であり、長い年月をかけて習慣化したものである。そういう考えでいけば、意識改革というものは自分の思考・行動の癖に気づき、他のもので代用するなどして根本のところから変えていかなくてはならない。
例えば、凡ミスなどは見た目には技術不足や狂いが理由のようである。しかし、根本は思考・行動の癖であると言える。後から見た目の技術的なところを指摘し追いかけても、また繰り返す。癖に気がつき、癖が出る前に未然に防ぐ・変えることが大事なのだと。そういう話をして合宿をスタートした。
2月4日(日)
【午前】
・散歩→食事→コートへ
・トレーナーによるウォ―ミングアップ
・ロビングラリー→ボール2つでロビングラリー
(入りを意識すること。前の足か後ろの足か、軸になる足を自分で意識して変えて工夫する)
・サービスライン対ベースラインラリー
(打点を上げることばかりではなく、打点をわざと下げる工夫も忘れないように指示)
・ノーバウンド対ワンバウンドラリー
(ボールに近づくことばかりではなく、わざとボールから離れて自分から前にでる工夫も忘れないように指示)
・ベースラインシュートラリー
(打点・幅を工夫し、ただの打ち合いにならないように指示。乱打にゲーム性をもたす)
・休憩
・U-14とラリー
(お互いに乱打をしてもらう・してあげるという意識ではなく最初から全力で向かっていく意識で行うよう指示)
・ボレーボレー
(足に力を入れて面を出す時と膝の力を抜いて面を出すときを使い分ける)
・休憩
・前衛のストレートボレー(フォローポジションからポジションチェンジしてボレー)
・上げボール練習の様子を動画撮影
・後衛のクロスラリーからストレートにきた球をボレーした様子を動画撮影。違いをみんなで検証する
→フィジカル面:戻り足の遅さ
→戦術面(考え方・予測):見切りの遅さ、見極め(来ないと思った時の無駄な動き)
→テクニック面:間合いを取るための伸び上がりなどの違いがあげられた。
・トレーナーによるクールダウン
【午後】
・トレーナーによるウォ―ミングアップ
・ロビングラリー(午前の課題を意識して)
・サービスライン対ベースライン
・ベースラインラリー
・ボレーボレー
・休憩
・右足一本でストローク練習
・左足一本でストローク練習
・その後、両足をつけて、右足一本で打った打点でストローク練習
・次に、両足をつけて左足一本で打った打点でストローク練習
(その際、足の間にもう1本、3本目の足があると思ってバランスを大切に)
・前衛 サイドのディフェンスボレー(午前に検証した課題を意識して)
・全員でネットインの乱打
・トレーナーによるクールダウン
・宿舎で食事のあとミーティング
篠原コーチが5日で帰るので気がついたこと、伝えておきたいことをアドバイスしてもらい、自分達で考える時間をつくった。
2月5日(月)
【午前】
・6時半から散歩→朝食
・コートへ徒歩で向かい、ウォ―ミングアップ。この後、9時からU-14とU-17は合同で体力測定
【午後】
・シャトルスタミナを実施
・ショートラリー(ハードコートを確認しながら少し動かしながら)
・ベースラインに下がってロビング→バックハンドでロビング
・ベースラインラリー
・ボレーボレー
(少し離れ気味で膝の抜きを意識して。距離を近くして下半身を固めることを意識して。)
・スパイダーの動きを取り入れた練習
(午前に行ったスパイダーテストの無駄な動きを指摘し、動きを確認し、しばらくしたらボールをつけていく)
・後衛 クロスへ走って一本打ち、すぐに逆サイドにショートボールを取りに行く
(スプリット、移動のフットワーク、ターン動作意識)
・前衛 クロスのローボレーを一本取って、すぐに逆サイドのチャンスボールを取りに行く
(スタートの足の運び、ターン動作、膝の抜きを意識)
※それぞれ反対のコースも行う
・ネットインの乱打
・後衛 ベースラインラリーからストレート
・前衛 サービスラインとベースラインラリー
・トレーナーによるクールダウン
・食事の後、トレーナーのよる形態測定
2月6日(火)
【午前】
・6時半散歩→朝食後、徒歩でコートへ
・トレーナーによるウォ―ミングアップ
・9時からベースラインのロビング
(ベースラインのロビングを打った後、サービスラインを踏みにいって戻ってまた打つ)
・ショートラリー
(ライジング気味に。スタンスを広くしてもう少し離れてスピードを上げて伸びのあるボールで)
・ベースラインシュートラリー
(1人5本でラリーを止めて、2秒で気持ちを作って次のラリーへ)
・マーカーを置いてフットワーク練習
(後衛→斜め後ろのステップからサイド)
(前衛→斜め後ろのステップから前へ)
ストップウォッチでタイムを計測し、グループで工夫しながらタイムが更新できるように話合いながら練習を繰り返した。
・トレーナーによるクールダウン
【午後】
・トレーナーによるウォ―ミングアップ
・スパイダートレーニング(測定してタイムを更新できるように)
・ボレーボレー(離れて膝をやわらかく)
・ボレーボレー(近づいてパワーポジションで固めて)
・ベースラインロブ
・ショートラリー
・ベースラインシュートラリー(2人で10本。2秒後打つを繰り返す)
休憩中に1秒、0.1秒の大切さを確認
シュートボールが打って返ってくるまでの時間をストップウォッチで測ったり、ベースラインからネットまでを測ったりして、フットワーク練習で1秒、0.1秒縮めることの大切さを確認(1秒・0.1秒でどのくらいボールは進むかを知る)
・後衛 サービスラインからベースラインに下がりストロークし、ミドルから一本打って、クロスに戻る→スパイダーの動きを生かした練習
・前衛 サイドボレーをしてスマッシュしてポジションに戻る→スパイダーの動きを生かした練習
・サービス練習をしてゲームを1試合ずつ行った。
・トレーナーによるクールダウン
※体調がすぐれない者が出たので早めに就寝。
2月7日(水)
【午前】
・散歩を遅らせて、朝食後、徒歩でコートへ
・トレーナーによるウォ―ミングアップ
・9時からロビングラリー→打ったらサービスラインにいってラリー
・ショートラリーゲーム
・ベースラインシュートラリー
・前衛 連続ボレー4本取り(2本目以降はかなりはやいテンポで上げボール)
※タクシーで血液検査へ
【午後】
・ナショナルチーム、U-14、U-17チームが集合し、会長と専務から激励の言葉を頂く。
・川上トレーナーによる測定
・トレーナーによるクールダウン
夕食の後、ミーティングで今回の合宿でのテーマの確認と6日間でアドバイスした内容についてもう一度まとめて説明をし、4月の単独合宿までの課題を確認した。
2月8日(木)
【午前】
・6時半散歩。朝食後、徒歩でコートへ
・到着後、部屋に入り、医科学の永野先生にアジア大会でのデータをもとに分析を行って頂き、講義を受けた。
・講義後、なわとびやリレーでウォ―ミングアップ
・ロビング、ボール2球でラリー
・バックハンドのロビング
・ネット前でツイストのラリー
・ツイストしてサービスラインを踏んでから戻ってツイスト、それを続ける
・シングルスコートでラリーが続いたまま人だけ代わっていく→それを2回
・休憩
・サービスボックスにひとりずつで、1コートに4人入り、上げボールでスタートして4人でボレーボレー
・ローボレー(プレーヤーにわからないように後ろから指示を出して上げボール。20本2コース2回ずつ)
・ナショナルチームとラリー(10分2回)
順番に整形の先生にメディカルチェックをして頂き、それぞれトレーナーが確認し、気になる選手は所属の先生方に連絡を取った。 最後に集合し、今後の課題・目標・4月への意気込みを皆で確認し、合宿を終了した。
総評・今後の課題など
今回は合同合宿としては2カテゴリー(U-17とU-14)での実施となり、会場決定が大変苦労した。
ナショナルチームの川上トレーナーが協力して下さり、3日、4日をネスタのコートで、5日からはビーンズドームを使用させて頂けることとなった。今後、U-20との引き続き連携を取り、合宿日程、会場を早めに決定し、安心して強化を行うことができるようにしていかなくてはいけないと思う。
今回はアンダー選手が選出されてから初めての合宿ということもあり、ステップ4でアンダー17として掲げた「先見の明」=先を見越す力を身につけようというテーマを引き続き掲げ、もう一度確認して、深めていった。
戦法、戦術などを決定していく際にテニスコートで先を読む力もそうだが、「今のままの自分でいくと、この先どんな未来が待っているか?」「今のままの自分でなりたい自分にたどり着くのか?」ということを考えて、今何をするべきかということをはっきりさせる必要があると思う。アンダーの活動を通し、本当に今やらなくてはいけないことを見つけて欲しいと思う。
取り組みの課題として挙げられるのは、やはり入りの悪さ。真面目ではあるが、周りの様子を伺って遠慮ばかりしていて、実際のパフォーマンスも最初から全力でできている選手はいない。さぼっているという自覚はなく、毎日、豊富な練習量の中で1秒をどう過ごすかというような緊迫感を無自覚に見失っているように思う。ベースラインからベースラインまでストップウォッチで計測して1秒、ネットまで計測して0.3~0.5秒という数字を意識することで、選手達はゲーム中に流れている時間感覚を改めて意識したようである。0.1秒早く動けばどれだけのことができるようになるのか、1秒以内に何を考え、判断しなければならないのか、これからもそういう感覚的なところがおろそかにならないように指導していこうと思う。
全体のフィジカル的なテクニック面では、切り返しに課題があった。ターン動作を繰り返し行い、計測すると数字もかなり上がった。体が覚えるまで本人が意識して行う必要がある。ポジション別の課題として前衛では見極めの悪さ、見切りの遅さがあげられる。そのことにより、無駄な動きが増え、次の動きに支障が出ている。今回も少し映像を撮って確認したが、単独合宿でも引き続き行いたい。
後衛の課題としては、打点の奥行きの幅が狭いことがあげられる。打点の高い・低いはある程度出せるが、前・後ろの幅が少ない。また打点のバリエーションをミスの回避に使うことが多く、攻撃パターンのバリエーションとして使うことが少ない。ここも継続して強化していこうと思う。
今回は合同合宿ということでU-14の選手とトレーニングや計測、ラリーなどでも交流し、お互い刺激にもなったし、後半はナショナルチームとU-20の合宿も同会場でスタートし、ラリーをしたり、スタッフの方々に指導頂いた。単独合宿では経験できないことを多く行えた。タイムスケジュールが少しタイトな日もあったが、選手達はきびきび行動し、また単独合宿も楽しみだなと思える合宿になったように思う。
最後に、今回も合宿を行うにあたり、多くの方々のお世話になりました。スタッフ、選手一同、皆様に恩返しできるよう一生懸命頑張って参りますので今後ともよろしくお願い致します。
(文/全日本アンダー17女子監督 髙井 志保)
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